冷却カメラの基礎と撮影事例
冷却カメラとは?
冷却カメラとは、イメージセンサーを冷やすことでノイズを減らし、暗い対象をきれいに撮影するカメラです。
長時間露光が必要な天体撮影などの低照度の撮影や、センサーの感度が低くなる紫外線/近赤外線の撮影に最適です。 イメージセンサーは光が入らない遮光状態でも、暗電流と呼ばれるノイズが発生します。暗電流はセンサーの温度に比例して発生し、一般に約6℃下がるごとに半減すると言われています。
ペルチェ素子を使った電子冷却でイメージセンサーを冷却
ペルチェ素子とは、電流を流すことで素子の裏表で熱の移動が起こり、片側が冷却・反対側が加熱され温度差が発生する素子のことです。 イメージセンサー側に冷却される面が接しており、反対側の面をヒートシンクに接することで放熱を行っています。 放熱の効率は外気温に影響を受けるため、イメージセンサーは外気温からマイナス35~45℃程度まで冷却が可能です。
暗くてもキレイに、再現性良く撮影できる
暗い対象を撮影するには、わずかな光を露光時間を伸ばし蓄積して撮影します。 冷却カメラは、長時間露光した場合でも不要なノイズの蓄積を抑えてキレイに撮影することができます。 また、冷却の温度管理を行い温度変化によるノイズの変化を抑えることで、再現性の高い撮影が行えます。 安定した撮影が必要になる計測やマシンビジョン用途に最適です。
近赤外線を撮影する
NIRカメラ(可視光~1100nm)
一般的なシリコン素材センサーのカメラですが、近赤外波長に感度の良いセンサーを選定して採用しています。 可視光も撮影できる量産品のセンサーのため比較的低価格であることが利点です。 撮影できる波長の範囲としては、可視光と700nm~1100nmまでの近赤外(NIR)波長です。波長が長くなるほどセンサー感度が低くなり、長時間露光が必要になるため冷却が効果を発揮します。
活用例:監視カメラ用途、生体透過撮影、ラベルなどの印刷物の透過撮影
SWIRカメラ(可視光~1700nm)
もう1つは、より長波長を撮影できるInGaA(インジウムガリウムヒ素)を含むSWIRセンサーのカメラです。可視光から1700nmまでの波長に対応しています。 特殊なセンサーであるためセンサー価格が高くなりますが、NIRカメラでは撮影できない1100nm以上の波長を感度良く撮影できるのが利点です。 撮影できる波長の範囲は、可視光から1700nmまでの近赤外(SWIR)波長です。
活用例:樹脂やシリコンウェハ内部の透過撮影、水分など素材の違いによる検出、加熱した物体の検出
紫外線を撮影する
UVカメラ(200nm~可視光)
紫外線の波長(200nm~380nm)は一般的なソーダガラスを透過しないため、紫外線を撮影するには石英ガラスを使った専用のレンズやカメラが必要になります。 分光感度特性からも分かる通り、波長が短くなるにつれて感度が低くなるため長時間露光が威力を発揮します。 ビットランの冷却カメラでは、センサー表面の保護ガラスや結露防止の封止ガラスなども全て紫外線を透過する石英ガラスを用いているため、低ノイズで良好な紫外線撮影が可能です。
活用例:放電現象の撮影、化粧品の評価、微細なキズや塗装ムラの検査